壬午月のある日、書店の海外文学のコーナーでなんとも分厚い本を見かけ、手に取るとその本には『聊斎本紀・りょうさいほんぎ』と書かれており、装丁もカッコよく内容も面白そうなので、読むことにしました。
閻連科の最新作は『聊齋志異』をベースにした幻想小説
「この小説は、帝王が子どもの頃から耳にしてきた故事、また帝王にその故事を語る人物も描きながら、おしまいには、帝王自身がとうとう故事のなかに入り込んでしまう、そんなお話です」。
「小説の地平を切り開いた蒲松齢先生に捧げる」――フランツ・カフカ文学賞をはじめ数々の受賞歴を持つ現代小説の大家・閻連科による、古今を行き来する霊魂召喚の作。狐狸や仙人、学生、霊魂などを描いた奇怪幽玄な東アジア版『千夜一夜物語』。
六歳の康熙帝は、側に仕える済仁じいやから、狐狸妖怪の故事を毎日繰り返し語り聞かされていた。それから30年、皇帝となった康熙帝は、幼い頃に聴いた故事が頭から離れなくなり、毎晩その狐狸を夢にみるようになった。皇帝の悩みを解決すべく、済仁じいやは、森羅万象すべてを描き尽くせる究極の絵師を探し出す――すべての故事は、その絵師が自らの魂を絵の中に入りこませることから始まるのだ。そしてその絵は、数百年後の台湾で、痛ましい転倒事故を引き起こすのだが……一方、仙妖の怪奇に魅入られた康熙帝は、大病のさなか、側近たちの制止をも顧みず、蒲松齢の書いた中原の歓楽国へ車を向けよ、命令に背く者がいたら斬首せよ、と宣言を下す――『聊齋志異』の扉は、こうして徐々に皇帝のために開かれていった。
ひとつのはなしの終わりからまた別のはなしが始まっている。康熙帝と一緒に故事を聴いていたつもりが、いつの間にか自らもその故事の中に入ってしまっている――閻連科の小説の魔術が、これまでの読書体験や常識を根底から覆すような、不思議な世界へ読者をいざなう。
一見バラバラに見える各エピソードが最終的に一つの物語に集約されていく構成は圧巻で舌を巻きます。元になった『聊齋志異』を読んでいなくても全然読めます。傑作です。
仙界の太白金星に住む李長庚は、観音菩薩の奸計によって天竺へと向かう三蔵法師に八十一の試練を与えることになった。だがそこには、仙界の大物たちが企てる隠された目的が見え隠れしていた。人間界も巻き込んだ壮大な計画の鍵は、孫悟空にあるというが……。
孫悟空が表紙ですが、主人公は孫悟空ではなく仙人の李長庚です。上記の文章を読んでもらえばなんとなく内容は掴めると思いますが、一言で言えば西遊記舞台裏ミステリーです。各キャラクターが魅力的で予想を裏切っていくストーリー展開で非常に面白いです。特にラストが素晴らしい。