前回からの続きです。
紛失した黒いリュックを受け取れるのは、翌日の7:35から。
それまでは、この神田駅で一夜を過ごさなければならない。
漫画喫茶も良いが、翌日は仕事が入っているし、多分ノイズが多くて熟睡できないだろう。
じゃあ、ビジネスホテルは?
駄目だ、所持金が少なくて、泊まれないだろう。
他には無いのだろうか?
とスマホをググって調べてみたら、
レンタルルーム
の文字が目に飛び込んできた。
ん?なんだろうな、その言葉初めて聴くけど。
部屋を借りる(直訳)?
説明文を良く読んで見ると、一泊5000円で泊まれるらしい。
うーん、予算的には大丈夫だ。
とりあえず行って見るかぁ。
そこは雑居ビルの中にあり、怪しいスキンヘッドのおじさんが受付をしていた。
私「あのー、泊まりたいのですが・・」
おじさん「一泊5000円になります。それと、シャワーを使うのだったら、追加で300円だね」
私「じゃあ、それでお願いします」
おじさん「今は部屋がいっぱいだから、30分後ぐらいに来てくれる?」
入り口付近のベンチで一服しながら待っていると、酔っ払いの若めのサラリーマンが近くのエレベーターから出てきて、フラフラと受付の方に入っていこうとしたら、
おじさん「はいはい、おたく何しに来たの?ここ使わないんだったら出てって」
と慣れた感じで追い出す。
しばらくして、さっき追い出したはずの酔っ払いリーマンが再びエレベーターから降りてくる。
それに気づいたおじさんは、すこし語気を強めながら、
「いいかげんにしてくれる?帰った、帰った」
両手を突き出す感じのまま素早く前に移動し、有無を言わさず酔っ払いを追い出す。
その一連の動作を見て、私は「すげー、慣れているな。おじさん、夜の世界が長そう」と思い、見事に本能的というか、野生の動物が縄張りを守る時の純粋な殺気と似たものを感じ、一瞬拍手喝采をしそうになった。
「お客さん、空きましたよ」
頼もしいおじさんの声が聞こえ、部屋の番号を告げられ行ってみると・・
どうみても、これ簡易的なラブホじゃん・・
そういえば、入り口で待っている時に、水商売っぽい女性が部屋から出てきたあと、5分後ぐらいに同じ部屋からサラリーマンが出てきたなぁ・・
・・・
ははーん、そういう感じに使っているのね・・
こういう深夜のリアリズムは嫌いじゃないなぁ・・・
そんなことをつらつら思いながら、神田の夜は更けていきました。